この酒の代わりに焼酎を
カクテルのレシピは六つか七つの蒸留酒のために書かれていて、そのどれも焼酎ではありません。置き換えると実際に何が起きるのか。そのまま成立するのはどこか、別の酒になるのはどこか、そして度数で失敗するのはどこか。
まず割り算の話から
レシピが指定する蒸留酒はたいてい40度で、焼酎の多くは25度。同じ分量を注げば、加水量はそのままに強さだけが三分の一ほど落ちる。それは置き換えではなく、同じ名前をつけた薄い酒でしかない。ここではその対処を必ず書いているし、強さが要る道筋には、実際に度数のある銘柄しか並べていない。
何の代わりに?
- ホワイトラム近い34 本が候補になる黒糖焼酎がいちばん近い。たとえ話ではなく、ラムと同じサトウキビから造られているという意味で近い。
- 熟成ラム・ジャマイカンラム使える68 本が候補になるハイエステルのジャマイカンラムのあの癖を再現できるものは、ここには無い。似ていると言う人は、おそらく飲み比べていない。使えるのは熟成した黒糖焼酎とクース。レシピが「香りが強く、単式蒸留で、時間の入った酒」を求めている場面でなら働く。
- ウオッカ近い210 本が候補になるこれはいちばん簡単で、しかも置き換えたほうが酒がよくなる場合がある。きれいな米焼酎や減圧蒸留の麦焼酎は、ウオッカの仕事をしたうえで、何かを持ち込んでくる。
- ブランコ・テキーラ別の酒になる59 本が候補になるここにアガベは無いし、アガベの代わりになるものも無い。常圧蒸留の芋焼酎がブランコと共有しているのは音域のほう。青くて土っぽく、わずかに硫黄を感じる、おとなしく座っていないベースという点。
- ウイスキー使える120 本が候補になる樽で寝かせた麦焼酎は、麦を蒸留して木に入れたもので、日本ではもう何十年もハイボールとして飲まれている。その一杯に関しては置き換えですらなく、すでに普通に注文されているもうひとつの選択肢。
- カシャッサ使える27 本が候補になるこちらもサトウキビ同士。ただし本質的な違いがひとつある。カシャッサは搾りたての汁から、黒糖焼酎は煮詰めて固めた黒糖から蒸留される。
- ジン別の酒になる34 本が候補になるジンはジュニパーの酒で、ここにジュニパーは一本も無い。だから焼酎のマティーニはマティーニの味にはならない。残るのは酒の骨格で、それは充分に価値がある。蔵元自身が、自社の焼酎でジンの形のカクテルを作っている。
ここに書いてあるのは判断です。事実ではありません。だから根拠を必ず併記してあるし、納得できなければ捨ててもらっていい。引用しているところが事実の部分で、その多くは国税庁の資料です。この問いには、酒の書き手より税法のほうがはっきり答えています。