なぜ作ったか
焼酎はもっと飲まれていい酒なのに、こちらでの紹介のされ方が飲み手を逃がしているからです。
焼酎は質で負けていません。負けているのは売り方です。そしてその躓きは、こちらで必ず聞かれるたった一つの問い、「これは何で、どうやって飲むのか」への答えの中にあります。
答え方はみな同じです。「伝統的には」と切り出して、作法の説明が続く。お湯割りは六対四、お湯が先。水割り。ロック。答えとしては正しい。ただ、最初に言うことではありません。
飲み方が悪いのではありません。芋のロックは私がいちばんよく飲む形ですし、そうでない日は麦のウーロン茶割りです。ただ、飲んだことのない人に「正しい飲み方がある」と伝えると、相手は「自分向けではない」と受け取ります。そして、注文の仕方を知っているものを頼みます。
だから、相手がすでにいる場所から始めます。ライチ。柑橘。生姜。もともと頼むつもりだったものを、これで作る。妥協ではありません。実際に飲んでもらえる入口は、そちらです。
答えが欲しかった問い
ニューヨークのロウアー・イースト・サイドで Izakaya Juraku という居酒屋をやっています。焼酎は質で負けていません。負けているのは売り方です。しかもその躓きは、こちらで必ず聞かれる「これは何で、どうやって飲むのか」への答えの中にあります。
答えはいつも「伝統的には」から始まり、作法の説明が続きます。正しい答えです。ただ、最初に言うことではありません。飲んだことのない人に「正しい飲み方がある」と伝えると、相手は「自分向けではない」と受け取ります。
飲み方そのものを否定しているのではありません。芋のロックも、麦の烏龍割りも、これを書いている人間の普段の飲み方です。問題なのは、それを最初に置くことと、その次が用意されていないことです。焼酎が何であるかの優れた解説は、業界団体のものを含めていくつもあります。輸入元のカタログにはテイスティングノートもあり、蔵元は自社の銘柄の飲み方を出しています。それでも、特定の銘柄と、その一本のグラスに実際に何を入れるべきかを、反論できる形の理由つきで結びつけた資料は見つかりませんでした。
ここが厄介なところで、このサイトを作った理由でもあります。本格焼酎は一度しか蒸留しません。原料がそのままグラスに残っている。すっきりした米焼酎なら、たいていの割り材を受け止めます。重い芋はそうはいきません。甘くて土の香りがあり、ウォッカの代用と考えて選んだ割り材とは正面からぶつかります。麦はその中間で、麹、度数、樽の時間でさらに動く。ここを一度外すと、はじめての人は「作り方を間違えた」とは思いません。「焼酎は好みではない」と結論します。
だから、その隙間を埋めるものを作りました。167蔵の531銘柄を、原料に照らして採点し、すべての提案に理由を表示してあります。納得できなければ反論できるようにするためです。
誰のためのものか
三種類の人を想定しています。もらったり、なんとなく買ったりした一本が家にあって、今夜それをどうするか知りたい人。焼酎を試したいけれど、何百本もある中からどれを選べばいいか分からない人。そして、店に立つ方。
最後のひとつが、このサイトの作りをかなり決めています。海外の店で焼酎が置かれるとき、たいていは度数の低いウォッカの代わりとして、米か麦が選ばれます。それは原料の違いが効かない唯一の使い方で、焼酎ができることの中ではいちばん面白くない部分でもあります。芋や黒糖をメニューに載せようとする店は、最初の一杯が下げられてくる前に、その一本が何とぶつかるのかを知っておく必要があります。
やらないこと
説教はしません。どの提案にも理由がついていて、無視してもらってかまいません。伝統的な飲み方は理由を添えた選択肢として出てきます。そこを通らないと先へ進めない関門にはしていません。
銘柄については推測しません。誰が、どこで、何から、どの麹で、何度で造ったか。そのひとつひとつに出典ページが付いています。二つの出典が食い違うときは、酒に近いほうを採ります。蔵元、次に官公庁や業界団体、輸入元、販売店の順です。そもそも食い違っていないことも多く、日本で売られている一本とこちらで売られている一本が別の商品で、どちらの記述もそれぞれ正しい、という場合です。本当に矛盾していて決着がつかないときは、どちらの数字も出さず、その旨を書きます。空欄のほうが、それらしい作り話よりも役に立ちます。実在する人が造っている実在の商品についての記述であり、実在する店の名前で公開しているからです。
一方で、合わせ方の提案は種類の違う主張です。同じ顔で並べるのは不誠実なので、分けて書きます。ここでの組み合わせは出典ではなく出発点です。多くは、その一本について公開されている事実から導いています。原料、麹、度数、ボディ、そして蔵元や輸入元が出しているテイスティングノート。実際に注いでみて分かったものもあります。蔵元自身が出している飲み方はそう明記してリンクします。それ以外は、蔵がその飲み方を推奨しているという意味ではありません。結論だけでなく理由を毎回書いているのはそのためです。どこまでが銘柄の事実で、どこからがこちらの推論なのかを見て、後半は捨ててもらってかまいません。
蔵元・輸入元の皆さまへ
造っている方々とご一緒できたらと思っています。広告のお願いではありません。広告枠は売っていません。このカタログは蔵元や輸入元が公開している情報から組み立てていて、その情報は蔵が知っていることより薄く、ときどき間違っているからです。
具体的には、次のようなことをいただけると助かります。
- 訂正。麹、度数、所在地、蔵名に誤りがあればお知らせください。その週のうちに直します。いまは出典が言っていることを載せています。できれば蔵が言っていることを載せたい。
- 御社の飲み方・割り方の資料。ハイボールやカクテルでの使い方を蔵で検討されているなら、出典を明記して引用し、御社にリンクします。公開されている蔵はいくつもありますが、英語圏ではほとんど読まれていません。
- 写真。いまのボトル写真の多くは輸入元からお借りしてクレジットを入れています。可能であれば御社の写真を、御社のクレジットで使わせてください。
- 載っていない銘柄。以前は、アメリカの輸入元が扱っている銘柄しか載せていませんでした。輸出をしていない蔵は、自社サイトで原料も麹も度数も公開していても載らない。地図の空白は「存在しない」ではなく「輸入されていない」を表していました。いまはその条件をやめています。国内だけで売られている銘柄でも、蔵のページに麹・度数・原料が書いてあれば、それで十分です。ぜひ載せさせてください。
- アメリカ市場向けの取り組み。2022年のニューヨーク州、2023年のカリフォルニア州の法改正で、24度以下の焼酎がようやく soju ではなく焼酎の名前で売れるようになりました。こちらでの前提が変わったところですが、アメリカの飲み手の多くはまだ焼酎という言葉自体を知りません。
私たちは出版社ではなく飲食店なので、これはメディアキットではなく、ゆっくりした、けれど本気のお誘いです。いちばん早い連絡先は下記です。