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焼酎とは

法律、分類、製法について、出典付きでまとめています。どの節にも参照元と、その内容を最後に確認した日付を入れてあります。

焼酎とは

焼酎は日本の蒸留酒で、主な原料は芋、麦、米。20度から25度で瓶詰めされることが多い。ウォッカがふつう40度ですから、25度の焼酎はその半分より少し上、酒精強化ワインと同じくらいです。ショットではなくグラスで、食事と一緒に飲まれるのはこの度数のためです。

よく知られた西洋の蒸留酒と大きく違うのは麹です。穀物にあるのはデンプンであって糖ではなく、酵母はデンプンをそのまま発酵できません。ウイスキーは麦芽、つまり大麦を発芽させて穀物自身の酵素で糖化します。焼酎は蒸した穀物に麹菌を生やし、より幅の広い酵素群で同じ仕事をさせます。焼酎の味の大半は、この違いから来ています。

このサイトが主に扱う焼酎は、連続式ではなく単式で蒸留されます。これは好みの問題ではなく法律の側の話で、単式蒸留焼酎は「連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したもの」かつ45度以下と定義されています。法律が見ているのは蒸留機であって回数ではありません。実際に一回で仕上げるのが本格焼酎の造りで、そのぶん原料の風味がそのままグラスに残ります。芋焼酎から芋の香りがするのはそのためです。もう半分は連続式蒸留機から出てきます。その二つがどれだけ違うかは、次の節で。

本格と甲類、この線引きがすべてを決める

酒税法は焼酎を二つに分けます。分けるのは原料ではなく蒸留機です。焼酎を理解するうえでこれがいちばん役に立つ知識で、二つは同じ酒と呼ぶのがためらわれるほど違います。

連続式蒸留焼酎(甲類)は連続式蒸留機で造られ、雑味成分がほとんど残らず、ほぼ中性に近い味になります。法律上の上限は36度未満。工業的に大量生産され、安価で、産地に紐づきません。缶チューハイや居酒屋のハイボールのベースはほとんどこれです。悪い酒という話ではなく、混ぜたものの味が立つように、それ自体はほとんど味がしないよう設計されています。

もう一方が単式蒸留焼酎(乙類)で、上限は45度。本格焼酎はその下の別の法区分ではなく、表示の名前です。酒税法第三条第十号はイからヘまで六つの原料の組み合わせを挙げていて、イからホまでに当たるものだけが「本格焼酎」と表示できます。穀類か芋とその麹、穀類の麹だけ、清酒かす、砂糖と米麹、そしてそれらに定められた副原料を加えたもの。残るヘは受け皿の条項で、蒸留後に糖類などを加えてよいのはこちらです。「本格」とは、定められた並びのほうから来た酒だ、という意味になります。

見分け方は容器ではなくラベルです。どちらも品目の表示が義務づけられていて、瓶も紙パックもペットボトルも両方にありますから、入れ物では分かりません。甲類は「連続式蒸留焼酎」または「焼酎甲類」、乙類は「単式蒸留焼酎」または「焼酎乙類」、条件を満たせば「本格焼酎」と書かれます。手がかりにならないのは「ホワイトリカー」です。国税庁の例外表示では甲類にも乙類にも認められている呼称なので、どちらの蒸留機から出たものにも付きます。このサイトにはどちらもあり、いま手元にあるのがどちらかは各ページに出ます。

酒税法第三条による二つの区分。本格焼酎は右の列の多くが名乗る表示であって、三つめの区分ではありません。
連続式蒸留焼酎(甲類)単式蒸留焼酎(乙類)、多くは本格焼酎
蒸留機連続式連続式以外
度数の上限36度未満45度以下
麹不要必要(穀類または芋)
味設計上ほとんどしない原料の味がする
主な用途チューハイ・ハイボールのベースそのまま、あるいは狙って割る
酒税法第三条による二つの区分。本格焼酎は右の列の多くが名乗る表示であって、三つめの区分ではありません。

ラベルに麹の色が書いてある理由

日本で使われる麹菌は三種類、黄麹・白麹・黒麹と呼ばれます。この違いは飾りではありません。酸の話です。

黒麹は Aspergillus luchuensis。白麹はその白色変異株である Aspergillus luchuensis mut. kawachii で、二十世紀初めに見つかったものです。挙動がよく似ているのはそのためです。どちらもクエン酸を大量に生成し、もろみのpHを、雑菌が繁殖できないところまで下げます。

焼酎が南の酒である理由はここにあります。九州と沖縄は暑く、温かい環境での発酵は、酵母と空気中のあらゆる微生物との競争です。自分でもろみを酸性にしてしまう麹菌が、その競争に勝ちます。清酒や醤油に使う黄麹(Aspergillus oryzae)はクエン酸をほとんど作らず、歴史的に南では安定しませんでした。

味の違いはこうです。黒麹は重く、コクがあり、旨味が強く、後味にキレが出る。白麹はより軽く、やわらかく、甘い。黄麹は冷却技術が問題を解決したことで通年使えるようになり、吟醸酒に近い果実味を出します。西酒造の富乃宝山は黄麹の芋焼酎で、芋焼酎は芋の香りが立つものだという前提を覆しました。

泡盛は、法律上は同じ区分。中身は別の酒

泡盛は法律上は本格焼酎と同じ区分に入りますが、別の酒であり、歴史はより古い。十五世紀ごろ、シャムとの交易を通じて蒸留技術が琉球王国に伝わって以来、沖縄で造られてきました。本土の焼酎はむしろ泡盛から派生したと考えられています。

泡盛を泡盛たらしめている条件のうち、法律で定められているのは二つ、残る一つは慣習です。麹は黒麹であること、そして全麹仕込みであること。この二つは表示のきまりにも、地理的表示「琉球」の生産基準にも書かれています。タイ産の長粒種インディカ米はそこに入りません。どちらの条文にもタイ米という語はなく、米の産地について定めもありません。ほぼすべての蔵が使っていますが、全麹仕込みでの扱いやすさによる選択であって、明日やめても泡盛でなくなるわけではない。

三つめは少し丁寧に説明する価値があります。焼酎のもろみは二段階で仕込みます。まず麹と酵母で一次もろみを立て、そこに主原料である芋や麦を加えて二次仕込みをする。泡盛には二次仕込みがありません。全量が米麹で、一度に発酵させます。泡盛が濃く、旨味が強く、そして熟成に向く理由はここにあります。

名称の根拠は、産地の印象より狭い。泡盛と表示してよい条件は、黒麹菌による米麹と水、単式蒸留、そして蒸留後に水以外を加えないこと。沖縄という地名は出てきません。産地を縛るのは地理的表示「琉球」という別の制度です。

三年以上寝かせたものが古酒(クース)。伝統的な熟成法が仕次ぎで、古い甕に若い甕から順に注ぎ足していきます。シェリーのソレラと同じ考え方です。

五つの地理的表示

日本は焼酎・泡盛の産地名を五つ、地理的表示として保護しています。所管は国税庁。根拠は酒税法ではなく、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第八十六条の六です。英語の解説はここをまず間違えます。これは販促用の呼称ではありません。指定区域の外の造り手は、どれだけ似た酒を造っていてもその名称を使えず、それぞれの名称には焼酎の定義そのものより厳しい製法要件が付いています。

壱岐、球磨、琉球は1995年の指定。WTOのTRIPS協定が加盟国に産地名の保護を義務づけたことを受けて日本が整えた制度によるもので、個々の名称がWTOに登録されているわけではありません。TRIPSに蒸留酒の名称の登録簿はありません。薩摩は2005年。東京島酒は2024年3月、十八年ぶりの新規指定として加わりました。

焼酎・泡盛の地理的表示と指定年
名称産地主な要件指定
壱岐焼酎長崎県壱岐麦と米麹をおよそ二対一、島の水、島内で蒸留・瓶詰め1995年
球磨焼酎熊本県 人吉球磨国内産米と米麹。米は地元産でなくてよい。水は球磨郡または人吉市内で採ったもの。仕込み、蒸留、瓶詰めは区域内1995年
琉球泡盛沖縄県米と黒麹、全麹仕込み、単式蒸留1995年
薩摩焼酎鹿児島県(奄美を除く)鹿児島県産のさつまいもと水、県内で蒸留・瓶詰め2005年
東京島酒東京都 伊豆諸島こうじは麦のみ。主原料は麦または芋類で、芋類を使う場合は国産さつまいものみ。水は島内で採水したもの。発酵・蒸留・貯蔵・瓶詰めまで島内で2024年3月
焼酎・泡盛の地理的表示と指定年

同じ芋焼酎なのに、まるで違う味になる理由

ラベルにはたいてい書いてありません。それでいて、同じ原料の二本がまったく別の酒になる理由としては、これが一番大きい。単式蒸留機は常圧でも減圧でも回せて、どちらも本格焼酎です。定義にも、地理的表示の生産基準にも、圧力の指定はありません。薩摩も琉球も、単式蒸留機で一回、と書いてそこで終わっています。

圧を下げれば、もろみは低い温度で沸きます。同じもろみをアルコール16度から1度まで蒸留するとき、蒸留缶の中は常圧で89度から99度、減圧では43度から51度。五十度前後の差が、蒸留のあいだずっと続きます。この差はグラスの中身を二通りのやり方で変えます。熱がなければそもそも生まれない成分があり、土や焼き芋の香りを運ぶ重い分子は、熱がないと出てこないまま釜に残ります。

できあがるのは、同じ酒のきれいな版ではありません。常圧なら、焼き芋のような、油分のある、まぎれもなく芋の酒になる。減圧なら、軽くて果実的で、りんごやバナナと言われる酒になる。同じもろみから別の酒ができるということで、だからこれは造り手の選択であって、レシピの話ではない。

減圧を新しくて良いやり方と考える前に、二つ。取り除かれると思われがちな高級アルコール類は、ほぼそのまま出てきます。そして重い成分が少ない分、熟成させても変化する材料が少なく、熱なら隠れていたわずかな雑味の隠れ場所もなくなります。

実際の使い分けは原料でだいたい決まっています。芋と黒糖はほぼ常圧、麦はほぼ減圧、米は両方。麦焼酎を飲んで思ったより何もないと感じたなら、たいていは麦ではなく蒸留機の話です。

焼酎とソジュ、そして手元の瓶のラベルが間違っているかもしれない話

別の酒です。混同されているのは本当に紛らわしいからではなく、ほとんどアメリカの酒販免許の事情によるものです。

韓国のソジュは単一の原料ではなく製法で定義されます。度数は焼酎との境界にはなりません。ソジュは10度台から40度超まで売られています。実際に売られているものの大半は、タピオカ・とうもろこし・糖蜜などを連続式蒸留機で高純度に精留したエタノールを希釈し、甘味と香りを加えたものです。伝統的なソジュは、単一の菌株から培養する麹ではなく、穀物を挽いて固め野生の菌をつけた麹(ヌルク)を使います。

本格焼酎はその造り方ができません。定められた原料を麹で仕込み、単式蒸留機で一回蒸留し、あとから加えてよいのは水だけです。

ここからが手元の瓶に関係する話です。アメリカの多くの州では、ビール・ワインの免許では蒸留酒を売れません。1990年代以降、24度以下のソジュには例外が認められてきた一方、焼酎には同じ例外がなかった。そのため、ビール・ワイン免許のレストランに置いてもらうために、日本の焼酎が soju と表示されて売られてきました。中身とはまったく関係のない理由で、日本の焼酎が韓国の酒の名前で流通していたわけです。

主要な二つの州ではすでに是正されています。ニューヨーク州は2022年7月に法改正、カリフォルニア州は2023年10月10日にAB 416が成立し、いずれも24度以下の焼酎をビール・ワイン免許で、しかも焼酎の名前のまま売れるようになりました。それ以前に印刷されたラベルの瓶はまだ流通しているので、soju と書かれた瓶が実は焼酎ということは十分にあります。

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理屈はここまで。あとは目の前の一本の話です。